Q1 私は、Aさんからマンションを月額10万円で借りています。ところが、Aさんから、近隣の賃料相場からすると10万円という賃料は安いから、賃料増額請求権を行使するので話し合いたいとの通知を受け取りました。賃料が増額される可能性はあるのでしょうか。可能性はあります。・不動産の租税公課の増加・不動産価格の上昇・その他経済事情の変動これらの事情により、近隣不動産の賃料と比較して安すぎると認められれば、賃料が増額されます。
Q2 (Q1の場合)Aさんから今後は月額12万円を支払うよう請求されました。毎月12万円を支払わなければならないのでしょうか。支払う必要はありません。Aさんとの間で話し合いがつくか、賃料増額の裁判が確定するまでの間は、あなたが相当と認める額(但し、月額10万円以上)を支払えば足ります。もっとも、賃料増額の裁判が確定し、既に支払った金額では不足することとなった場合には、不足額に年1割の利息を付してAさんに支払わなければなりません。
Q3 私はAさんから月額10万円でマンションを借りています。もっとも、近隣の相場からすると賃料が高いので、賃料を減額してもらいたいと考えています。どうしたらよいですか。Aさんに対して、賃料減額請求権を行使するという通知をしたうえで、話し合いをすることになります。
Q4 (Q3の場合)賃料減額するようAさんと交渉しようとしましたが、Aさんは話し合いに応じてくれません。どうしたらよいですか。賃料の減額を求めるために民事調停を起こす方法があります。また、斡旋仲裁を申し立てるという方法もあります。さらに、話し合いがまとまらなければ、裁判(民事訴訟)を起こします。
Q5 (Q3の場合)Aさんに対して、賃料の減額請求をしているのですが、決着するまでの 間、従来どおり毎月10万円を支払わなければならないのでしょうか。Aさんが10万円の支払を求めてくる場合には、支払わなければなりません。賃料減額請求権が行使された場合、賃貸人は、話し合いがまとまるか、裁判(民事訴訟)が確定するまでは相当と認める金額(ただし、従前の賃料額以下)を支払うよう賃借人に請求で きます。もっとも、賃貸人が受け取った金額が、減額の裁判が確定した結果、定められた賃料額を上回ることとなったときは、賃貸人は賃借人に対し、その超過額に年1割の利息を 付して返還しなければなりません。
Q6 私はマンションの一室を借りています。賃貸期間は3年と定められています。今般、3年の期間満了に伴い、賃貸人から、立退料を支払うから出て行ってほしいと言われました。出て行かなければならないのでしょうか。 出て行かなくても良い場合があります。出て行かなければならないかどうかは①解約が申し入れられてから6ヶ月が経過したかどうか②解約の申し入れに正当な事由が認められるかによって判断されることになります。詳しくはご相談ください。
Q7 私は、あるビルの一室をAさんから借りています。ところが、Aさんから、ビルを建て替えるので、賃貸借契約を中途解約するとの通知を受け取りました。出て行かなければならないのでしょうか。原則として、出て行く必要はありません。もっとも、契約書にAさんが中途解約することができるという条項があり、かつ、ビルが老朽化しているなど、Aさんの中途解約の申し入れに正当な事由が認められる場合には、解約の申し入れから6ヶ月が経過すれば、出て行かなければなりません。詳しくはご相談ください。
Q8 (Q6、7にある)正当な事由は、どのような場合に認められるのですか。画一の基準はありませんが、以下のような事情を総合考慮して判断されます。過去の裁判例に照らしてアドバイスしますので、ご相談ください。①賃貸人、賃借人(転借人を含む)のどちらがより借家を必要としているか②賃貸借契約に関する従前の経過(好意で契約したかどうか、賃料額の相当性、契約違反の有無、これまでの更新の有無等)③借家の老朽化の程度④立退料を支払ったかどうか
Q9 私は、Aさんから賃貸期間を3年とし、更新がない契約(定期借家契約)を締結しました。あと1ヶ月で契約してから3年が経過しますが、未だにAさんから解約の申し入れがありません。賃貸期間が満了すれば明け渡す必要がありますか。明け渡す必要はありません。賃貸期間が1年以上の場合、契約を終了させるためには、期間満了の1年前から6ヶ月前までの間に、賃貸人が、期間満了により契約を終了させることを賃借人に通知する必要があります。設例の場合、賃貸人Aさんから契約を終了させる通知がないので、賃貸期間が満了しても契約は終了しないことになります。
Q10 私は、Aさんから賃貸期間を3年とし、更新がない契約(定期借家契約)を締結しました。Aさんから解約の申し入れがないまま3年が経過し、私はそのまま借り続けていたところ、Aさんから解約の申し入れがありました。借家を明け渡す必要がありますか。解約の申し入れがあった日から6ヶ月が経過する前に明け渡す必要があります。定期借家契約において、建物の賃貸人が通知期間の経過後、建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合には、その通知の日から6ヶ月を経過すると定期借家契約は終了すると定められています。
Q11 私は、10年前からマンションを借りて住んでいる者です。つい先日、大家さんから当該マンションを購入したという方がマンションを明け渡すよう請求してきました。私は、大家さんと賃貸借契約を結んでからというもの、ずっとこのマンションに住んでいるのですが、明け渡さないといけないのでしょうか。明け渡す必要はありません。建物について賃貸借契約が結ばれている場合、その建物が賃借人に引き渡されていれば、賃借人は、第三者(例えば、建物の購入者)に賃借権を対抗できるからです。
Q12 私はマンションを借りて住んでいます。ある日、全く知らないAさんが現れて、マンションを買ったから今後はAさんに賃料を支払うようにと請求されました。登記簿を確認したところ、Aさんが当該マンションを購入したようですが、私は前賃貸人に対して、賃料を前払いしています。Aさんから、前払いした賃料についても支払うよう請求された場合、支払わなければいけないのでしょうか。支払う必要はありません。賃借権が対抗力を備えている場合(建物の賃貸借については引渡しを受けていれば、新賃貸人に賃貸借契約の存在を対抗することができます。)、旧賃貸人との賃貸借契約の内容がそのまま新賃借人に引き継がれるからです。
Q13 私は、マンションを借りて住んでいる者です。ある日、競売で落札した方がマンションを明け渡すよう請求してきました。そこで、私がマンションの登記簿を調べたところ、私の入居後にマンションに抵当権が設定され、最近になって、その抵当権が実行されたことが発覚しました。私は、賃貸借契約を結んでからというもの、ずっとこのマンションに住んでいるのですが、明け渡さないといけないのでしょうか。 明け渡す必要はありません。抵当権の設定に先立って設定された賃借権であり、かつ、賃借人が建物の引渡しを受けていれば、賃借人は、競落人に賃借権を対抗できる(優先する)からです。
Q14 私は、平成20年からマンションを借りて住んでいます。当該マンションには、平成18年に抵当権が設定されていたようです。最近になって、その抵当権が実行され、競売でマンションを購入した方が私に明渡すよう請求してきました。明け渡さないといけないのでしょうか。競売で購入してから6ヶ月を経過した場合には、明け渡さなければいけません。抵当権が平成18年に設定されており、あなたの賃借権は当該抵当権設定の後に発生しています。このような場合、抵当権はあなたの賃借権より前に設定されているため、抵当権が優先するからです。
Q15 私は、ある一軒家をAから借りています。退去するにあたり、Aさんから日焼けした畳を換えるための代金まで敷金でまかないたいが、敷金が足りないので追加で支払うよう請求されました。支払わなければならないのでしょうか。支払う必要はありません。一般的に畳の日焼けは自然損耗だと解されます。そして、自然損耗部分を回復するために敷金を使うことは原則としてできないと解されます。詳しくはご相談ください。
Q16 私は、Aさんから工場を借りている者です。Aさんは、Bさんから土地を借りて、その土地にその工場を建築しました。ある日、Bさんから土地を買ったというCさんが現れて、工場を明け渡すよう請求されました。工場を明け渡さないといけないのでしょうか。あなたと地主との間に契約関係はありませんので、あなたにとっての貸主であるAさんの借地権(土地の賃借権)がCさん(土地の新所有者)に対抗できるかどうかによって決まります。そして、借地権を対抗できるかどうかは、原則として、工場の所有権保存登記の設定とCさんの土地の所有権の移転登記、その先後により、決まります。